始業式で体育館に向かう途中、三上くんが横に並んだ。


「昨日はあれから、ご両親に怒られたりしなかった?」

「怒られるって…なんで?」

「誕生日にこんな時間まで帰ってこないで、どこの男にたぶらかされたんだ…とか」


三上くんの例えを、お父さんが言っているところを想像したら、笑ってしまう。


「全然遅くならなかったし、何も言われなかったよ」

「なら良かった」


優等生は爽やかに微笑んで、先に行った。

いつもと変わらない三上くん。

あたしの不安定な心なんか、お見通しのはずなのに。

それでも彼はあたしの為に、変わらずに接してくれる。

いつまであたしは、彼の優しさに甘えていれば気がすむんだろう。

体育館に入ると、クラスの列の後ろで、友だちと談笑しているユウナ先輩と目が合った。


「美緒!」