誕生日の夜に、彼氏をこんなことに付き合わせて。
ここまでして、あたしはアイツに会いたいのか。
アイツの話を聞きたいのか。
でもなんだが、アイツの話を聞いちゃいけない気がするのは、なぜだろう。
よくないことが、待っている気がするんだ。
なんだか緊張が高まってきて、落ち着こうと深呼吸した時、ふとこっちに近づいてくる車が目に入った。
その車は人だかりから少し離れたところ。
ちょうど金属製のドアの前あたりで止まった。
銀に光るエンブレムに、フルスモークの窓。
この車って…いつか見た、あのベンツ?
恭一をよく追いかけていた黒塗りベンツじゃないだろうか。
ということは、中に乗っているのは…。
スモークのかかった窓の向こうが見たくて目をこらすと、不意に運転席のドアが開いた。
出てきたのはやっぱり、神社で会ったあの人。
千堂とかいう、ヤクザなお兄さんだった。
ダークカラーのスーツを着た、目つきの鋭い男の人は、派手な見た目をした若者だらけのこの場所で、ひどく浮いて見える。


