「酒井さん、寒くない?」
「平気。…混んできたね」
ライブハウスの裏には、女のコを中心としたファンで人垣ができていた。
ナカという人が蹴っていた金属製の扉ではなく、シャッターの下ろされたガレージの前をぐるりと囲んでいるみたい。
こんなに人がいたら、恭一が出てきても、あたしには気づかないかもしれない。
「酒井さん。ちょっと待っててくれる?」
「え…。三上くん、どこか行くの?」
「バイクをこっちに回すよ。念のため」
「念のためって?」
「いや…。すぐ戻るから」
そう言って、三上くんは表の通りへと走っていった。
三上くんの走る姿って、体育以外ではあんまり見ないな。
彼の姿が見えなくなり、あたしは一人、人垣の後ろに立ちながら考えた。
あたしはここに、何の為に立っているのだろうか、と。


