「よくわかんないけど、出待ちするの? するなら早く行っておかないと、かなり並ぶ…」
ユウナ先輩が言いかけた時、暗くてせまい路地の奥から、何かがぶつかるような激しい音が響いた。
誰よりも先に反応して、あたしは音がした方に走った。
「…っざけんな!」
裏通りに出ると、ライブハウスの金属製の扉を蹴る男がいた。
さっきステージで恭一に殴られた、ナカとかいうヴォーカルだった。
「こっちゃ頼まれたから入ってやったっつーのにッ!!」
へこむんじゃないかという勢いで扉を蹴る男は、やっぱりダミ声。
あたしに気づいた男は舌打ちをして、苛立ちを露わにしながらその場から歩き去っていった。
あの様子だと…彼はパパノエルから脱退したんだろう。
これでまた、恭一たちのデビューの道は遠のいたのか。
きっとハルカさん、怒っているだろうな。
「いまのって、ナカ?」
「はい。…なんか、辞めるっぽいです」
遅れて来たユウナ先輩そう言うと、彼女はほっとしたような顔をした。
本当にパパノエルが好きなんだな。


