「恭一………」
深田恭一。
あたしの腹違いの兄が、そこにいた。
まばゆいライトの下で、あの垂れ目を鋭くさせて、ヴォーカルを睨んでいる。
『それは外すって言っただろ!』
『いいじゃん別に。俺歌えるし』
『そういう問題じゃねえよ!』
『じゃ、どういう問題だよ。ファンが聴きたいっつってんだから、やるしかないじゃん。な? みんな聴きたいよなあっ?』
ヴォーカルが観客に向けて掲げたマイクに、「聴きた~い!!」という声援がそろって入った。
『ほ~らみろ。さ、いくぞラスト~!』
観客を煽りに煽って、ヴォーカルは大きく息を吸い込んだ。
『CHIQUITITA』はヴォーカルのソロから入る。
ガラガラ声が最初の歌詞をつむいだ時点で、恭一はあきらめたような顔をしてまた、こちらに背を向けようとした。
けれどその一瞬、
あの垂れ目に、あたしの姿が映った。


