重い扉を開いた途端。
心と体をはげしく揺さぶる音が、正面から津波のように押しよせた。
スピーカーからの爆音が、うす暗い空間全体を振動させている。
目の前には柵に沿って、よこ一列にならぶ人の影。
聞き覚えのある曲に、聞き覚えのない声が歌をのせている。
この歌。
誰が…
誰が歌っているの?
あたしは三上くんの手を離れ、歌い手をこの目で確かめるために一歩をふみ出した。
列の途切れたスペース。
そこには下へ向かう階段があり。
体をぶつけあいながら狂ったようにジャンプをする、明らかに定員オーバーな観客の波が広がり。
彼らの熱い視線と声援の先には、暗闇の中に白く浮かび上がるステージが。
「きゃー!! ハルカーッ!!」
「ミッキーっ!!」
あちこちから、知っている名前を呼ぶ声が上がる。
そして、
「ナカく~ん!」
「ヤバいィ! エイジこっち見た~ッ」
知らない名前も聞こえる。
まぶしいライトの下、ステージの真ん中に立つヴォーカルは、アイツではなかった。


