らくがきにビラだらけの汚い壁に囲まれた廊下をまっすぐ進むと、その先にスタッフらしい人が二人、テーブルについて談笑していた。
どっちもヒゲを生やした若い男の人。
「チケットお願いしま~す」
「早く早く。もうすぐ終わっちゃいますよ~」
二人の横の扉から、音と歓声が漏れ聴こえてきた。
「中すんごい混んでて危ないから。足元気をつけてくださいね~」
仕事をすませると、二人はすぐ談笑に戻る。
「どうなんだろねぇ」
「俺ァうまくいかない方に賭けるぞ」
「裏切りモン」
「だってナカさんはパパノ向きじゃねーもん」
彼らの会話に耳を傾けながら、三上くんの後ろに続く。
聴き覚えのあるメロディーが扉のむこうからわずかに流れて耳に届いてきた。
この先に、アイツは本当にいるんだろうか。
半信半疑のあたしは無意識のうちに、三上くんの手を強くにぎりしめていた。
三上くんは何も言わず、目の前の運命の扉に、手をかけた。


