三上くんは何かを言いかけて、口を閉じた。
あたしはそこでようやく、顔を上げた。
「…なに?」
「いや…」
三上くんは少し困ったような顔で、首を振った。
「チケット。持ってきてるんでしょう?」
あたしは答えなかったのに。
三上くんは確信しているようで、迷いなく「行こう」と言った。
そしてあたしの、小刻みに震える手を強く握って、また歩き出した。
あたしは抵抗もできず、ただ手を引かれるまま、彼について行った。
固い地面の上を歩いている心地はまるでなく。
だんだんと、全身の感覚が麻痺していっているような気がした。
自分の誕生日を、これほど長く感じた日は他にない。
進む先に見えてきた、四階建てのビルの前。
若者が人だかりを作っている中に、あたしたちは踏み込んだ。


