こうして見ると、やっぱり三上くんはお父さんとよく似てる。
きっと恭一とあたしが兄妹だと言うより、三上くんと兄妹だと言うほうが、信じてもらえるんじゃないだろうか。
「ここ出たら、どこに行きたいか、考えてきた?」
「……うん」
窓の外に目をやる。
まだ四時前で、日は落ちていない。
薄い雲がかかった空は、きっとすぐ色を変えていくんだろうけれど。
そうなっても、あたしは三上くんと二人でいよう。
今日は、彼と二人きりで一日を過ごす。
迷いは、馨さんのおかげで吹っ切れた。
「…美術館に、行きたいな」
気づけばポツリと呟いていた。
三上くんは意外そうにまばたきをする。
「美術館?」
「うん。三上くんと、ゆっくり静かに過ごしたい」
そう言って、まだ温かいクッキーを一枚、小さくかじった。
香りよりも、少し甘さは控えめで、ほんのり紅茶の味がする。


