笑いながら、立ち上がる。
笑えなかったあたしに、彼女は手を差し出してきた。
「美緒さん。優くんをよろしくね」
悪意なんてみじんもない、爽やかな笑顔。
あたしは何も考えることができず、ただその手を握り返していた。
彼女の白い手が握り返してくるその強さが、そのままあたしの中に重しのように残った。
わかっていた。
三上くんがどんな人なのか。
三上くんはいつだって何よりも、あたしの気持ちを大切にしてくれた。
守ってくれた。
あたしの気持ちが恭一へとまた向きつつあると知られたら。
きっと彼は、迷わずあたしの背中を押すだろう。
あたしへの気持ちの程度なんかが問題なんじゃない。
彼はそういう人だから。
そんなのは、嫌だと思った。


