イヴの日にサーブしてくれた、穏やかな笑顔の男の人。
かなり落合さんの方が年上のように見えるけど。
「お似合いだろ? 婚約もしてるんだ」
「えっ。まだ大学生なんじゃないの?」
「そういう家というか…。ここのオーナーがそういう人だからね」
「へえー。なんかすごい人なんだね」
「かなりね」
おかしそうに目を細める三上くん。
前に来た時も思ったけれど、この店では三上くんは、どうやらとてもリラックスできるらしい。
彼のまとう空気が、いつもよりずっと柔らかくなる。
なんとなく、わかる気がした。
古い木の温かみとか、抑えられた明るさとか。
気分が落ち着いてくる。
それからすぐに落合さんが、注文したコーヒーやワッフルを持ってきてくれた。
挨拶をしながら、あたしは彼の手にも指輪があるのを確認し、おそろいなんだろうなと微笑ましい気持ちになる


