「おい優(ユウ)…っと」
黒のライダースを着て現れたその人は、あたしの予想を遥かに越えて、三上くんと似ていなかった。
二十歳くらいだろうか。
彫りの深い顔立ち、不精で伸ばしたような長い黒髪、削げた頬。
細身だけれど肩があって、背が高いから体格が良く見える。
ぎらついた瞳があたしを見た。
「一丁前に女連れ込みやがって。何でお前がいるんだ?」
「兄さんこそ。何しに帰ってきたの」
「自分ちに帰ってきて何が悪い」
「いつも帰ってこないことが悪いんだよ。母さんが、連絡よこせって」
「めんどくせえ。俺が来たこたァ黙っとけ」
三上くんが答えずただ肩をすくめると、お兄さんは鼻を鳴らして部屋を出て行った。
なんだか、優等生の三上くんとは正反対の雰囲気の人だと感じた。
近付くと危険な猛獣みたいな。
「ホントにお兄さんと似ていないんだね」
「兄さんは母さん似。ごめんね。びっくりしただろ」
「ううん。卒業して家出たって言ってたけど、働いてるの?」
「みたいだよ。何をしてるのかはわからないんだけど」


