「コータ先輩は別格なのにさァ。ちょっとキレーだからって、マジ調子こいてるよね」

「なんつーの? 女王気取り?」

「そんなカンジー。マジお高いよねー」


女王を気取った覚えなんてない。

でも北川先輩っていう人には心当たりがある。

夏休み前に告白してきた、サッカー部の二年生だったはず。

コータ先輩まではいかないけれど、そこそこ人気があるらしいことを、ユリから後で聞かされて、不思議だった。

だってその人、歯に青海苔ついてたし。

ついでに鼻毛も一本出ていて、あたしはその時からかわれているとしか思えなかった。

北川先輩の顔を思い出し、ため息を一つついてから、よく見ると『コータLOVE』と落書きされていた、個室の扉を開けた。

鏡越しに、髪を直しながらしゃべっていた女子四人と目が合う。

全員違うクラスの生徒だ。

彼女らは一瞬、ヤバいという表情になって、顔を見合わせた。