「ありがとお父さん」
「ああ。あの八ツ橋、うまかったな。友だちに礼を言っておいてくれ」
「…はーい」
お母さんには、彼氏からのお土産だと正直に話していたけれど、お父さんにはもちろん秘密。
彼氏からだってわかったら、八ツ橋を吐き出すくらいしそうだ。
「あ、ねえお父さん」
「何だ?」
「あのさ…もうすぐあたし、誕生日でしょ?」
「そうだな。何か欲しい物あるか?」
「そうじゃなくてね。…恭一の誕生日って、いつか知ってる?」
お父さんは一瞬目を丸くした。
それから口元でだけ微笑んで、あたしの濡れた頭を撫でた。
「5月6日だ」
「5月か…」
「彼の誕生日を祝うなら、俺の分も祝ってあげてくれ」
何だか嬉しそうに言って、お父さんは部屋を出ていった。
あたしと恭一が仲良くするの、嬉しいのかな。
あたしは少し複雑な気持ちになり、それをココアと一緒に飲み込んだ。
――――――
――


