「えっ。京都から帰ってくるの、まだ先じゃなかったっけ?」

『向こうに飽きちゃったから、一人で先に帰ってきた』


三上くんは普段通りの落ち着いた声で言った。

それはつまり、他の家族はまだ京都ってこと?

止められなかったのかな、家族に。


『あ、間違えた。グランパとクインと一緒だった』

「ふぅん?」

『それで、そのグランパと今、酒井さんちの前にいるんだけど』

「ふぅん……って、えぇ!?」


びっくりして、携帯電話を落としそうになった。

ベッドの横の窓を開き、外に顔を出す。

すると門の方に、三上くんの頭が見えた。

グランパは見えない。


「ちょっとそこで待ってて!」


あたしは電話を切り、コートを掴んだ。

部屋を出る直前に、ネックレスをしていないことに気付いたけれど。



少し迷って結局、そのままで部屋を後にした。