「…で?」
白い息と煙りを同時に空へ向かって吐き出し、ハルカさんはあたしに続きを促した。
「わからなく、なりました。だって…恭一はヴォーカルだって言ってたから。アイツは…ヴォーカルなんですよね?」
ハルカさんは晴れた空を見上げたまま、しばらく動かなかった。
やがて近くの木から鳥が飛び立った時、彼はこっちを見て口を開いた。
「恭一はウチのヴォーカルだったよ」
「…だった?」
「やめたんだよね」
「な、何で!?」
「新しいヴォーカルはナカって奴になった」
「そんな…」
ちょっと待って。
それじゃあ、次のライブにあたしが行っても意味がないんじゃないの?
恭一がいないなら、行く理由がない。
「何でやめたんですか」
「別にやめたくてやめたワケじゃないよ」
「でも、それじゃ…」
恭一はどうしてあたしにチケットをくれたんだろうか。
歌いはしないけれど、そこで待っていてくれているというのだろうか。


