少し開いたあたしたちの間に、粉雪が後から後から舞い落ちてくる。

あたしは、動けない。


「……次のライブは、一月十五日。時間は、七時から」


一月十五日?

待って、それって…。


「始まる前に、裏のスタッフ用の入り口で待ってる」


言いながらまた、恭一が一歩退く。

うっすらと、アスファルトに広がり始めていた雪の上に、履き込んだスニーカーの跡がつく。


「その時、話すから」

「……え」

「全部、美緒ちゃんに話すから」


話すって何を?

全部って、どういうこと?

それらの疑問を口にすることもできず、あたしがただ立ち尽くしている内に、恭一は俯いたまま、街灯の下から夜の闇へと消えていってしまった。




最後に「マフラー、ありがとう」という言葉を残して。




雪が降る中一人きりになった途端、あたしのむき出しの膝が震え始めた。

寒さのせいじゃない。

これは何?

驚愕、不安、戸惑い、恐れ、切なさ、それとも…。

まだあのカサついた感触が残る唇に、指を持っていく。