「…別に遅くはないでしょ。バイトの日より早いよ」
「ん…そうか?」
「そうだよ。…着替えてくる」
「あ、美緒。お風呂わいてるからね」
「はぁい」
お母さんは機嫌が良さそうに笑っていた。
その理由はたぶん、ローボードの上にある、白い花瓶に飾られた花束だろう。
お父さんは普段から、あんなしかめっ面をしているくせに、けっこうマメだったりする。
階段を上がって、右手奥の部屋に入ると、自然とため息がもれた。
「……びっくりした」
優等生のイジワルなお誘いの話しじゃない。
まったく別の、ある意味ショックだった事実。
コートを脱いで、ハンガーにかけたところで、あたしはもう一度ため息。
まさか三上くんが…
「うちのお父さんに似てたなんて……」
どうしていままで気付かなかったんだろう。
奥二重の切れ長な瞳とか、すっきりとした鼻筋とか、神経質そうな尖り気味の顎とか…。
そっくりじゃないか。
眼鏡をかけたお父さんが、未来の三上くんに思えた。
きっと三上くんはいつも涼しい顔をしていて、うちのお父さんは常にしかめっ面で。
対照的と言える表情の二人だから、気付かなかったんだ。
「あたしって……ファザコン?」
かなり落ち込む新事実。


