いつもより、時間がゆっくりと流れるらしい店の名前は『美野里亭』。
大正時代の古い家屋を見上げ、またきっと来ようと決めて、あたしは三上くんと門を出た。
体はポカポカしていて、冷えた風は心地良くすら感じる。
どちらからともなく手を繋ぎ、あたしは暗い空を、三上くんは真っ直ぐ前を見て歩く。
バラバラな方向を見ていても、しっかりと手を繋いでいれば、寂しくないことを知った。
広場に着くと、さっきより人は減ってはいるものの、まだ混んでいた。
カップルが九割の人混みをかき分けて、あたしたちはなんとか噴水が見える位置に移動する。
広場の中央付近は噴水から少し遠いけれど、人が少なくて、赤レンガの足場は他より高くなっていて、辺りがよく見渡せる。
「寒くない?」
「うん。平気…わあっ」
白かったライトが、冬のイルミネーションらしく、神秘的な青へと色を変えた。
「青って、綺麗だよね」
「うん。俺が一番好きな色、青なんだ」
「ふふ。わかってるよ」
あれだけ『青いバラ』について熱く語られたんだから。


