三上くんオススメの料理はどれも美味しくて、特にビーフシチューがあたしは気に入った。
スタッフをはじめとした店の雰囲気は落ち着いていて、堅苦しい感じはなく。
懐かしさと温かさがある料理の数々に、たくさんの本に美術品に囲まれて。
こんなにゆったりとした時間をすごせるなんて、贅沢なことだと思った。
食事が済んでからも、また二人で画集や本を眺めて、食休みを充分にしてから店を出た。
「良いクリスマスを」
店を出る直前、あの穏やかな笑顔の男の人がそう言って見送ってくれた。
「すごく美味しかったし、素敵だった。ホントに良かったの? ご馳走してもらっちゃって」
「いいんだよ。俺はオーナーの顔見知りだから、いつもサービスしてもらってるし」
「じゃあ、ごちそうさまでした」
「いえいえ。…八時少し前か。駅前の広場、行く? ライトアップ見たいって言ってたよね」
「うん。行きたいな」
まだ八時前だったんだ。
もっと長い時間を店で過ごしていた気がしていたから、少し驚いた。


