幼い頃に描いたという絵を、愛おしそうに撫でる指先。
こんな優しげな三上くんの顔を、クラスのみんなが見たらきっとびっくりするだろう。
もしかしたら、惚れちゃう子だって出てくるかもしれない。
でもいまのところ、彼の魅力に気付いているのはあたしだけ。
嬉しいような、もったいないような。
「あたしは夢なんてないから、うらやましいよ。でもさっき、青いバラを造り出すのは不可能だって、言ってなかった?」
「生物学的には不可能だね。…でも俺は昔から、叶わないものを追いかけるのが好きなんだ」
「叶わないと思ってても追いかけるの?」
「そう。だからこれまで人を好きになっても、いつも片思いだったよ。叶わない恋ばかりでね」
冗談めかした三上くんの声。
でも言われた瞬間、あたしはギクリとした。
心を、
迷いや苦悩を、
すべて見透かされているのかと、怯えてしまった。
あたしは三上くんが好きだ。
何度彼に救われただろう。
三上くんといると、心から安心できる。
そのことに間違いはない。
ただ、あたしは…
「…あたしも、イイ恋愛ってなかったな。でもいまは、違うよね?」
伺うように三上くんを見て、同意を求めるように問いかける。


