三上くんはバイクで送ると言ってくれたけど、歩いて帰ると断った。
「そう。じゃあ散歩がてら送るよ」
赤いリードを見せる三上くんに、ありがとうを言った。
最後にクインに頭を撫でさせてもらえることができ、満足しながら広い三上家を後にした。
薄暗くなり始めた外はかなり冷えていたけれど、グランパは元気にあたしたちの足元を飛び跳ねる。
けれどしつけはきちんとされているようで、リードをぐいぐい引っ張るようには走らない。
小さな彼を見つめながら、あたしたちはしばらく無言で歩いた。
三上くんはもしかしたら怒って…いや、傷ついているのかもしれない。
聡い彼はきっと、あたしが恭一からの連絡を待ちわびていることに気づいているだろう。
キスの後、真面目な話をしていたのに、あんな態度をとってしまった。
謝るべきかな?
でも謝ったりしたら、言い訳くさくなって余計に変になるかも。
ちらりとリードを持つ彼の細い手を見た。
いまこの手に手を重ねたら、引かれるかな。
「持ちたいの?」
「…えっ?」
「いいよ、持って。気をつけてね」
あたしがグランパを散歩させたいと考えているのだと、勘違いをしたらしい。
いや、リードは持ってみたいと思っていたからいいんだけど。


