それからどれくらい経っただろう。
あたしがその場から動くこともできず、ただ原チャが去っていった方の道路を呆然と見ていると、不意に携帯電話が鳴りだした。
家からかと思ったけど、流れたのはメールの受信音。
『おつかれさま。
もう家には着いた?
三上』
ああ…
きっと三上くんの第三の目は、千里眼かなにかなんだろう。
タイミングが良すぎるよ。
心があなたに、寄りかかりたいと訴えてしまう。
あたしは震える指で三上くんの番号を呼び出し、通話ボタンを押した。
『…酒井さん?』
コール2回で出た声は、いつもと同じ落ち着いた響きであたしの耳に流れ込む。
泣きそうになったけれど、星も見えないただの黒い空を見上げ、こらえた。
『どうしたの?』
「ん…ちょっと、三上くんの声が聞きたくなって」
『…無事に家に着いた?』
「ううん…まだ。帰ってる途中」
そう答えると、電話の向こうで物音がした。
ガサガサとか、ガタンとか。


