耳は、おかしくなってない。
「なに…言ってんの?」
「…ごめん。俺はキミに、会っちゃいけなかったんだ」
「だからなんで…っ!」
「ごめん…」
あたしはカッとなって、恭一のすでに傷だらけになっている顔に平手打ちをしてしまった。
さっきは暴力を嫌悪したくせに、自分の手は止められないのか。
やるせない。
「なんなのよいまさら…っ!!」
叩かれた恭一はあたしを見ないまま、瞳を揺らして小さく呟く。
「…ごめん。キミにはもう、二度と会わない」
ちょっと、待ってよ、どうしてそうなるの?
「待って、なんで!?」
恭一は答えず、原チャにまたがった。
その後ろにさっきまで殴り合いをしていたハルカさんが無言で座る。
「恭一っ!!」
あたしの叫びはエンジン音に消え、二人を乗せた原チャは夜の闇に消えていった。
あたしと大きな水たまりだけを、アスファルトに残して。


