その瞳にあたしは不安をつのらせた。
「恭一…まだ、なにか隠してるの?」
濡れた背中がぶるりと震えた。
ハルカさんは何も言わず、ただ濡れた衣服に残る水を振り落としている。
「なにかあるなら…あたしは、アンタの口から聞きたいよ」
これ以上まだなにかあるなんて想像もつかない。
まさかさらにあたしを暗闇に突き落とすような事実、あるワケがないだろう。
そう思うのに、一度生まれた不安は拭えない。
「…恭一?」
「美緒ちゃん」
恭一は一歩前に出て、あたしの手から離れた。
瞳を怯える子どものように揺らしたまま、うつむく。
「俺は………」
濡れた手を体の横で握りしめ、形のきれいな眉をきつく寄せる。
息苦しさを感じるほど、鼓動が強くはやくなる。
なにを言うつもりなの?
ダメだ、こわい……!
思わず耳を塞ごうとした瞬間、恭一が呟いた。
「俺は、キミに会うべきじゃなかったんだ」
耳を、疑った。
あたしは水を浴びてない、耳に水なんか入っていない。
冷たい風に耳をやられたのかと思った。
恭一の後ろでハルカさんがタバコをくわえる。
火をつけようとしたけど、うまくいかないようで、ため息が大きく聞こえてきた。


