店の外に設置されている公衆電話のそばに、掃除用の水道がある。
ホースを繋げて、ヘッド部分の水力調整ネジを『強』にした。
「やめろって言ってんでしょ―――ッッ!!!!」
シャワーヘッドから冷水がもの凄い勢いで二人に向かって吹き出した。
落ちる葉もなくなった晩秋の夜に、全身に水を浴びた二人は、予想だにしない状況にピタリと動きを止めた。
「ふたりとも聞こえた?」
あたしが水を止めてまた声をかけると、ずぶ濡れの二人はようやくこっちを見た。
「よくわかんないんだけど…そんな殴り合いなんかしてどうなるの? 冷静に話し合うことくらいできるでしょ?」
ホースを戻し、恭一のそばに立つ。
濡れた背中に手をそえた。
水が滴る金色の前髪の間から、薄茶の瞳が揺れるのが見えた。
まるで怯える子どものような瞳だった。


