今度こそ、あたしは叫ぶ声も失った。
ハルカさんの綺麗すぎる顔が歪み、吹き飛ばされる。
「ありえねーのはお前だ!! いま誰に手ェ上げようとしたッ!?」
夜道に響く怒鳴り声。
恭一は目を血走らせ、倒れたハルカさんに近づいていく。
「言ってみろコラ!! こっちこそ一発じゃすまねえぞッ」
「…っかじゃないの? 逆ギレ?」
「んだとォ?」
「誰が一番ムカついてると思ってんの? 誰が一番迷惑してると思ってんの?」
ハルカさんは血の混ざった唾を地面に吐き出した。
よろけながら、細い足で立ち上がる。
「腑抜けたヤツに足引っ張られて、せっかくのチャンスが消えそうになってんだよ。ミッキーは優しいから何も言わないけど、それに甘えられちゃ困るんだよ」
「あいつは…」
「ミッキーは理解してくれてるとか、ふざけたコトは言わないでほしいね。そりゃ仲間だもん。協力しようと思ったよ。いや、協力したいと思った。でも状況が状況だし、だいたい最初の約束とちがうじゃない」
ハルカさんは疲れたように、そして自分を落ち着けようとするようにタバコに火をつけた。
闇に息と紫煙とが混ざって流れる。


