「バンドのコト。あんたいま、大事な時期なんでしょ?」
「バンドはまあ、そうだけど。俺は別に…」
「ウソだね。あんた迷ってるだけでしょ」
ちょっと睨みながら言ってやると、恭一は目を逸らしてうつむいた。
どうせなら、暗いアスファルトなんかじゃなく、星を見上げればいいのに。
「前のメンバーに未練があるにしても、デビューにだって惹かれてんでしょ。このままあたしにかまけて逃げてたら、きっと後悔するよ」
「……なんか、美緒ちゃんがオトナなコト言ってる」
「あたしは前から、あんたよりはオトナだよ」
「美緒ちゃん……好きっ!!」
なにを思ったか、恭一はいきなりあたしに抱きついてきた。
心臓が、止まるかと思った。
「な…、なにすんのよっ!」
「美緒ちゃん、やっぱ彼氏なんかダメだよっ! 俺のドコが不満なのォ!?」
「っ…そういうトコがだよバカっ!」
力いっぱい叫んで、あたしは縁石から恭一を突き飛ばした。
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