「今度は嘘じゃないよ。…ってゆーか、なんで前のがウソだって知ってるの?」
そういえば、あたしは言った覚えがない。
コータ先輩が彼氏だと、嘘ついたままだった。
「あの何日か後、校門で美緒ちゃん待ってる時に…彼が来たんだ。あれは自分がとっさについた嘘だって言ってたよ」
あたしはあの日カフェで見た、コータ先輩の寂しげな笑顔を思い出して、泣きたくなった。
あの人は、一体どこまであたしに優しかったんだろう。
「そう…でも、ホントに三上くんとは…」
「ダメだって言ったでしょ」
「恭一…」
「キミには彼氏なんてまだ早いよ。俺は許さない」
あたしは誰より愚かだ。
恭一にこう言われて、どこか嬉しく感じている自分がいる。
でも、なんか奇妙だ。
兄というものは、こんな風にはっきりとした束縛を見せるものなんだろうか。
「それ、変ですよ」
あたしの気持ちをそのまま代弁したのは、三上くんだった。


