自分の中にあった、固くて冷たい石みたいなものが、雪みたいに溶けていくのを感じた。


「お父さんっ」


部屋を出ようとしたお父さんを呼び止めて、あたしも立ち上がる。

テディベアを抱きしめながら、ずっと訊きたかったことを口にした。


「どうして…あたしを連れてったの?」

「…?」

「昔…恭一と会う時に、あたしも連れてったのはどうして?」


あたしの問いに、お父さんは考えるそぶりも見せず、なんだか若返ったような微笑みを見せた。

なんだか、なつかしい感じのする笑顔。


「恭一くんだ」

「え?」

「彼が、妹に…お前に会ってみたいと言ったんだ」

「恭一が…」

「一度だけのつもりが、お前たちがあまりにも仲良くなるもんだから…何度でも会わせたくなったんだよ」


そう言って、お父さんは部屋を出ていった。

あたしはその夜、テディベアを強く抱きしめて眠った。





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