お父さんは懐かしそうな目でテディベアを見つめる。


「…恭一、自分の正体言わなかったんだ。あたし自身に思い出してほしいんだって」

「そうか…」

「で…あたしは恭一の正体に気づく前に、アイツを好きになってたの」

「美緒…」


お父さんの眉間のシワが深くなる。

あたしは笑ってみせた。


「大丈夫。もうその気持ちは忘れるコトにしたから」

「………そうか」

「うん。…お父さん、どうする? 恭一に会いたいとか、思わない?」


お父さんは小さく息を吐いて、首を振った。


「恭一くんは、なんて言ってるんだ?」

「恭一は…お父さんにも、もちろんお母さんにも会うつもりはないって。恭一のお母さんも、あたしと会ってるコトは知らないんだって」

「そうか…なら、会うべきじゃないな」


お父さんは寂しげに笑って立ち上がり、あたしの頭を撫でた。

悪かったな。

大きな手は、そう言っているようだった。