家の門を出たところで、思った通りお父さんが追いかけてきた。
「美緒、待ちなさい」
「…なに?」
振り返ると、お父さんのすごく動揺しているような顔があった。
顔色も悪く見えるのは、きっと気のせいじゃないね。
「その…いまの話は、本当なのか…?」
「好きな人の話? ホントだよ」
「そう、か…。その、相手の名前は…」
「深田恭一。二十歳の大学生」
「…………どうやって知り合ったんだ?」
ああ…お父さんが、なんだか泣きそうに見える。
別にお父さんを困らせたいわけじゃないんだよ。
あたしは小さく息を吸った。
「あたし、全部知ってるから」
「…なに?」
「知ってるの。お父さんと恭一の関係も、あたしと恭一の関係も」
あたしがそう言った瞬間の、お父さんの顔…
きっと一生忘れることはないだろう。
動揺と、痛みと、不安と、恐怖…そういう感情がごちゃ混ぜになったような、複雑な顔。
「み……」
「だから大丈夫。血がつながってるんじゃ…どうにもならないし」
「………」
お父さんは何か言おうとするように、口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した。
でも、いまさらお父さんから聞くことなんて何もないよ。


