悲しい色の秋空に、ため息をつきかけたとき、前から手が伸びてきて、机の上にルーズリーフのノートが何枚も置かれた。

いちばん上のノートを手に取る。


『たいしたことはしてないよ』


短い言葉、キレイな文字。

その下のノートは全部、あたしが休んでいた間の授業内容、黒板の板書が書かれたものだった。




「…ありがと」




聞こえるか、聞こえないかの声であたしがお礼を言うと、優等生は前を向いたまま、軽く右手を上げた。

押しつけがましくない親切、気遣い。

きっと三上くんは、ちゃんとわかってやっている。

同い年とは思えないくらいオトナだな。

かっこ良すぎるぞ優等生。

傷だらけのあたしの心に、彼の『素っ気ない優しさ』は、深く深く染み込んでいった。