つまりはそれが答えだ。

やっぱりそうなのか。

恭一がこれまであたしにくれた温もりはすべて…

妹を想う、兄の優しさだったのか。


「美緒ちゃん…思い出した、の?」


震えているような声を聞いて、あたしは目の前の胸を押し返した。

距離をとって、写真を差し出す。


「この写真…っ! なんで、美緒ちゃんが…」


写真から顔を上げた恭一は、あたしを見て目を見開く。

でもきっとコイツは、あたしが泣いてる理由なんて、これっぽっちもわかっちゃいないだろう。

それでいい。

シルバーリングが光る手が伸びてきたから、あたしは一歩退いた。


「触らないで」

「み、美緒ちゃん」

「いいから。…そのままで、話して。全部、聞かせてよ」


流れた涙はすべて、アスファルトに吸い込まれていった。

せめて一緒に、この絶望も吸い込まれていってしまえばいいのに。

そうしたら、あたしに残るのはなんだろう?

ただ、虚無感ばかりか。

笑いたかったのに、あたしはいま、笑い方を忘れてしまっていた。






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