あたしは黙って、恭一の前に立つ。


「美緒ちゃん?」


不思議そうに、首を傾げる恭一は笑顔。

あたしはこみ上げてくる涙を止めることができなかった。

そのまま恭一の胸に、顔を押し付ける。


「み…っ!? ど、ど、どしたの?」


慌ててる。

いきなり目の前で泣かれたら、誰だって驚くよね。


「あっ。イヤなお客さんとかいた? そんでセクハラされたとか? 大丈夫だよ美緒ちゃん! 俺が仕返ししとくしねっ」


あたしはうつむいたまま首を振る。


「ちがうの? じゃあ…どうしたの」


指の長い手が、あたしの肩を包む。

あったかい、優しい手。

けれどあたしが持っている写真には、それを虚しく思わせるつまらない真実が写っている。


「…………キョウにーちゃん」


あたしの呟きに、肩に置かれた手が、びくりと震えた。

シャツの上から感じる鼓動が、一瞬止まった気がした。

そして鼓動は徐々に、大きく速くなっていく。