それから放心状態のようになって、しばらく薄暗い店の裏手で、あたしはしばらく立ち尽くしていた。

気付いた時には九時半を回っていて。

いつの間にか、店に戻っていて、無心でレジで客対応をしていた。

バイトの先輩が、あたしの様子がおかしいと気付いたのか、訝しげな顔でこちらを見ていた。


バイトが終わり、あたしは着替えてフラフラと店の外に出る。

店の前では約束通り、金髪の男が待っていた。


「おつかれ、美緒ちゃ~ん」


イラっとするけど嫌いになれない、間延びした声。

いつもの気が抜ける笑い顔。




ねぇ、お願い恭一。

嘘だって、いつもの調子で、笑って言って。