「……あ……っ」
断片的に蘇る記憶。
写真の背景はあの動物園だ。
あたしがお父さんとよく行ったあの…
ちがう。
ちがった。
お父さんと二人じゃなかった。
いつももう一人、誰かが…いたんだ。
あたしはその人を、なんて呼んでいた…?
思い出せ。
いや、思い出しちゃだめだ。
思い出してしまったら、きっと後悔することになる。
それを感じ取っているのに、記憶はあたしの意識など関係なく、蘇ってしまうのだ。
忘れていたものを、すべて思い出す。
「……キョウにーちゃん…」
受け入れがたい過去を思い出した時には、ハルカさんの姿は消えていた。
呆然とする以外、あたしに何ができただろうか。


