好奇心に抗えないのは人の性か。

それともあたしの心が弱いのか。


休憩時間になって、あたしは店の裏に向かった。
ハルカさんはいた。

店の外壁に背を預けて、ロングタイプの煙草を吸っている。

彼女はあたしに気付き、煙草を携帯灰皿に入れ、あたしと向き合う。


「休憩は何分?」

「15分です」

「そう。…あなたが恭一を思い出せば、すべて終わるわ。でも物心つく前のことなんて、誰だって簡単に思い出せるものじゃない」


言いながら、美女はバッグから封筒を取り出し、あたしに差し出してきた。


「アイツのやり方じゃ、いつまで経っても思い出せるわけないのよ。物事にはいつだって、きっかけが必要だわ」

「なに…?」


あたしは封筒から中身を取り出す。

それは、一枚の写真だった。

そこに写っていたのは、

小さい頃のあたしと、

小学生くらいの男の子と、


「お父さん……?」


子供二人の後ろには、

いつもはかたい表情の若いお父さんが、優しげに微笑んでいた。