発進した原チャは、人目につかないよう細道を選びながら走っていった。
「コラ、美緒ちゃん。しっかり掴まってねって言ったでしょ~?」
赤信号で停まった時、恭一はやれやれとあたしの手をつかみ、自分の腰にしっかりと回させた。
遠慮して服をつかんでいたのに。
頬が広い背中に当たる。
バカ恭一。
ドキドキしちゃうじゃん。
恭一の高い体温を感じながら、あたしは唇だけで「スキ」と呟いて、トライバルを思い浮かべながら、その背中にこっそりキスをした。
聞こえなくてもいい。
届かなくてもいい。
それでも生まれた感情は、想いは、止まるものじゃないから。
そばにいさせて。


