建物の影に隠れながら、なんとかベンツから逃れて本屋の狭い駐車場に入った。
ガレージの裏に目立たないよう停められていた原チャに、あたしは目を細める。
これに乗るのも久しぶりだ。
「ホラ、美緒ちゃん」
赤いメットを、恭一の出て被される。
あたし専用だって言ってたこのメット。
あの人は、使ってないよね?
そんなことを訊いたら、コイツはどんな顔をするだろうか。
「またアイツらに見つかったら、飛ばさなきゃなんないからさァ。しっかり掴まっててね~」
楽しそうに言う男の後ろに乗り、あたしはため息をつく。
絶対に後で色々吐かせてやる。


