「み、み、美緒ちゃんっ」
あたふたと、ムダに服を直したり、髪を直したり。
恭一はあたしが校門から出てきたことに、ひどく驚いているようだった。
「あ、あのさ! きの…昨日は…」
「悪いけど、しゃべってるヒマはないの」
「美緒ちゃぁぁん…」
「情けない声出さないでよ。バイトがあるの」
「…バイト? バイト出るの?」
恭一の目が、わかりやすいくらいに輝いた。
「そう。…だから、バイト終わった後なら、いいよ」
あたしがそう言うと、恭一は肩の力を一気に抜いて、へらっと笑った。
相変わらず締まりのない顔。
でもあたしは、このヘラヘラした笑顔が好きなんだ。
我ながら、趣味がワルい。
「じゃあコンビニまで送るよ。原チャで来てるからさ」
「うん…ありがと」
「あっ。じゃあ取りあえず、走ろうか!」
「えっ!?」


