「俺のことは…どうやっても、好きになれない?」


あたしはゆるく首を振った。

そんなワケない。

こんなにカッコ良くて優しい人、好きになれないはずがない。

『超イケメン』で、ちょっと強引で、脳天気っぽいトコはあるけど、実は色々考えてて、どこまでもまっすぐに、あたしに優しい、そんな人…


「でも、ダメなんです」

「ダメ?」

「先輩は……アイツとよく、似てるから」


コータ先輩のキレイな目が見開かれる。


ああ、悲しいな。


こんなに優しい人を、傷つけたくなんかないのに。

コータ先輩は天井を仰いでうめいた。


「っあ~…。いまのはキたなァ。いままで美緒に言われた中で、一番キた」

「ごめんなさい。…先輩の方が、ずっとカッコイイし…」

「いいよ、わかってる。そういうんじゃないんだよな」

「…………」

「それじゃ…仕方ないよな」


先輩の手が、コーヒーカップをつかむ。

あたしもそれから無言で、カフェオレを飲んだ。

恋というものを苦いと思ったのは、これがはじめてだった。






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