一騒動の後、あたしとコータ先輩は、恭一と別れた場所から少し離れたところにあった、客の少ないカフェにはいった。
「…痛みますか?」
前に座るコータ先輩に尋ねる。
先輩はあたしが濡らして渡したハンカチを、左頬に当てながら首を振る。
「たいしたことないよ」
「よかった…」
「…ごめんな。こわい思いさせちゃって」
「そんな。あたしこそ、ごめんなさい。先輩のこと巻き込んじゃって」
「巻き込んでもらえて、俺はうれしいからいいんだよ」
心からそう思っているような笑顔。
コータ先輩はほんとに優しい人だ。
顔だけじゃない。
だからあんなに人気があるんだな。
ウェイターが運んできたカップ。
あたしが温かなカフェオレに口をつけようとした時、コータ先輩が「イッ…!」とうめいた。
「っつ~…。そういや俺、口ん中切ってたんだ」
「大丈夫ですか…?」
「うん。コーヒー頼んだのは失敗だったなァ」
照れ笑いを浮かべる先輩に、あたしはぎこちなく笑い返す。
すると先輩は、急にマジメな顔をした。


