「美緒ちゃん……俺は、あきらめないからね」
迷い、苛立ち、戸惑い、痛み。
様々な感情の色を浮かべながらも、強い意志がそこにはあった。
何それ…
先に歩き出していたハルカさんを追いかけ、恭一があたしに背を向ける。
ずり落ちたシャツの下に、あのトライバルちらりと見えた。
去り行く背中にかけたかった言葉。
行かないで…
それを飲み込んだと同時に、あたしは涙を流した。
ダメだ。
自覚してしまったら、もうごまかせない。
涙が、止まらない。
「美緒」
大丈夫か?
コータ先輩の手が、あたしの頭に伸びかけて途中で止まる。
触らないで…
そんな心の声が、コータ先輩には聞こえたのかもしれない。
良かった。
いま触れられたらきっと、あたしは先輩の手を、振り払っていただろうから。
それからあたしが泣き止むまで、先輩は野次馬の目からあたしを隠すようにただ、立ってくれていた。


