自分の体が震えていることに気付いた時、
「そうよ。野蛮なことはもうおしまいにして」
不意に凛とした声が割って入ってきた。
それまで傍観していたハルカさんが、倒れた恭一を引っ張り起こした。
「もう行くよ。時間だ」
「っ…。ハルカ、おまえ先行ってろ」
「バカ言わないでよ。今日は遅れられないの、わかってるでしょ」
「……後で行くから」
こっちを睨みつけながら言った恭一に、ハルカさんはため息をつく。
そして次の瞬間、恭一の頬を平手打ちした。
野次馬のざわめきの中で、乾いた音が短く響いた。
あまりにも綺麗に入った平手打ちに、恭一はよろめいた。
「あたしたちまで巻き込むつもりなの? もういい加減にしてよ。…あのコも嫌がってるんだし」
ハルカさんがあたしを見て言う。
恭一は唇を噛んで、しばらくしてから握りしめていた拳をほどいた。
揺れる薄茶の瞳が、あたしみ捉えて一瞬光った気がした。


