わからないよ恭一。
どうしてそんな恐い顔してるの?
どうしてそんなに、怒っているの?
「美緒ちゃん。二人で話しがしたい」
「や…やだ。したくない」
あたしは首を振って、アスファルトに倒れたコータ先輩に駆け寄ろうとした。
でも恭一の手に、とうとう腕をつかまれて動けなくなってしまう。
「美緒ちゃん! ちゃんと俺を見てよ!」
「やめてっ! 放してっ」
「やめないし放さない! やっと会えたんだから、ちゃんと話しを…」
「キャ……ッ!」
言いかけた恭一を、今度は起き上がったコータ先輩が殴り飛ばした。
「先輩!」
「ざけんなテメェ!! 美緒に触ってんじゃねえッ」
温厚なコータ先輩も、口調を変えてすごい形相をしている。
倒れた恭一に掴みかかろうとするから、あたしは慌てて先輩を止めた。
「もういい! 先輩やめて!」
「よくねーだろッ」
「ごめんなさい! でも殴り合いなんか見たくないよっ!」
細身だけど、やっぱり男の人なんだ。
いまにも恭一にのしかかろうとするコータ先輩を、あたしは全身で止めにかかる。
恭一が殴られた瞬間の映像が、頭に張り付いて離れない。


