「おニーサン? なに言ってんの?」
「許さないって言ってるんだよ」
「は?」
「ダメだよ美緒ちゃん。彼氏なんて、キミにはまだ早すぎる」
強く言い切って、恭一がまた距離を縮めてくる。
あのヘラヘラ男が、顔から笑顔を消していた。
「何言ってんだアンタ? 美緒の保護者でもないくせに」
「キミには関係ないよ。黙っててくれない?」
「だから俺は美緒の…」
彼氏だ。
そう続けようとしただろうコータ先輩を、恭一は突然、思い切り殴りつけた。
コータ先輩の体が真横に飛ぶ。
人の流れに先輩がぶつかって、悲鳴が上がる。
でも一番近くにいたあたしは、驚きすぎて声も出せなかった。
あたしを守るように立ってくれていた背中がなくなり、別人のような顔をした恭一と、向かい合った瞬間。
自覚してしまった。
あたしにとっての、恭一という存在の意味を。


