あたしはそのことに恐怖すら感じて、無意識に一歩後退した。
「…美緒ちゃん、なんで急にあんなこと言ったの…?」
よかった。
ヒカルはまだ、情に流されてなかったか。
「理由なんか、ない。もう近づかないで」
「そんなんで納得できるわけないでしょ」
恭一の、シルバーリングがいくつもついた手が、あたしに伸びてくる。
つかまったら、きっと逃げられない。
びくりと体を強ばらせたとき、肩を後ろに引かれて、背中になにかが当たった。
「何してんだアンタ。美緒が嫌がってんだろ」
コータ先輩が、恐い顔をして恭一を睨んでいた。
恭一の手を払って、あたしを自分の背中に隠してくれる。
「美緒はこれから俺とお茶するから、ジャマしないでくれる?」
「…誰、キミ」
「決まってんじゃん。美緒の彼氏だよ」
あたしは驚いて、コータ先輩のジャケットの裾をつかんだ。


