すぐには、振り返ることができなかった。
だって、
この声を聞くのが、すごく久しぶりな気がして。
実際は二週間も経ってないけど、以前は毎日のように聞いていた声だから。
「美緒ちゃん」
もう一度呼ばれて、ゆっくりと振り返る。
ああ…恭一だ。
派手な頭、たれ気味の目、ジーンズにパーカーというラフな格好。
そして、右隣りににはあの強烈な美女。
ハルカさんが、恭一の腕に手を絡めて立っていた。
「ハァイ」
ニコリと微笑んで彼女が手を振ってくるから、あたしは反射的に頭を下げた。
恭一は「え?」って不思議そうな顔で隣りを見たけど、すぐに真面目な表情をあたしに向けた。
「やっと会えた。お願いだからもう逃げないで、ちゃんと話しさせてよ」
「…こないで」
「だからなんで…」
ハルカさんの手をほどいて、恭一がこっちに近づいてくる。


