「先輩、一人なんですか?」
「そうだよ。俺、買い物は一人でしたい派なの」
買い物の仕方に派閥があるのか。
ならあたしも一緒だ。
買い物は大抵一人でする。
先輩はあたしを人の流れから、道の端へと引っぱり出した。
「時間あるならお茶でもどう? お嬢さん」
「それってナンパですか」
「まあね。せっかく会ったんだしさ。おごるよ?」
「結構です」
「あーらら。またフラれちゃったか」
「………いや、うん。いいですよ」
少し考えてからあたしが答えを変えると、コータ先輩は形の良い目をまんまるにした。
「え、いいの?」
「はい。でも、あたしにおごらせてください」
「美緒に? なんで?」
影で助けてくれていた、お礼がしたいから。
そう言おうとした時、人ごみの中から、
「美緒ちゃんっ!!」
聞きたくない、声が聞こえた。


